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CASKE2000


Snakeman and the Ancient Mayan Medicine

JP spearfishing
ジョンフィリップ

スネークマンと古代マヤの薬

ジョンフィリップ・スレ

ルーク・シュレンバーガー

snakeman
スネークマン


ヘビ―西洋では恐怖感、嫌悪感を抱かせる動物だろう。しかし、聖書では悪の象徴とされるヘビも、古代ギリシャでは薬・医学のシンボルとされ、未だ多くの国で救急車や薬局のマークに使われている。また、古代マヤの人々はヘビをあがめ、ガラガラヘビが描かれた陶器や壁画を数多く残している。マヤの女神 the herbs Ix Chel の 髪 飾りに施されたヘビは、ひときわ目立つ存在であることからもその重要度が伺い知れる。
中国人同様古代マヤの人々も、ある特定の種類の動物が持つ治癒力・特性を信じていた。彼らが中央アメリカに残した伝説の万能薬、”カスカベル”というヘビの骨から出来た薬は、今でも伝統を受け継ぐ治療師達によって使われている。
そして10年の歳月をかけ、スネークマンと呼ばれる男の秘密の研究所・治療院から、この古代の薬”カスカベル”をめぐる新しい論争が起ころうとしている。20年前、医療科学や伝統的治療法そしてマヤの文化に魅了された彼は、ベリーズに渡り、そこで素晴らしい発見をするに至った。

ベリーズに残るその土地の伝説は、私達をマヤ伝統医術の世界へ導き、西洋医学界の支配関係や懐疑的な態度を見直すきっかけとなった。伝統的な治療法の中には副作用を起こさずに免疫力を高め、体が自然に病気と闘うことを助けるものもあるという。しかし、ほとんどの人々が西洋の化学薬品を信頼する今、それは忘れ去られている。様々に変化を遂げる病気や、抵抗力をつけた変種の出現に現代の医薬は押され、消滅してしまったと長い間思われていた伝染病が再び現れ始めている。もしかすると、信念を守り続けた治療師達が残してきた秘伝と、新しいバリエーションがその解決の鍵を握っているのかもしれない。

スネークマン

ピーター・サインフィールドと初めてコンタクトを取ったのは2年前、ちょうどこの遠征の準備期間中だった。ピーターとジョンフィリップはともにいくつかのメーリングリストに入っていた。そこでは、様々な熱帯性疾患についての情報や意見などがメールを通して交されていた。ピーターは多くの西洋医薬に強く反対していたため、医療の専門家とかなり長期に渡る討論を繰り広げることがよくあった。ほとんどの場合、西洋医薬の有毒な副作用・不確かな効果・将来性に焦点が当てられていた。
メキシコとの国境近くの町コロザールに到着するまで、私達はピーターにコンタクトを取り続けていた。”スネークマン”と呼ばれる彼を探すのに時間はかからなかった。驚いたことに、コロザールでピーターまたはスネークマンと言えば、人々は”ああ、あの男か”といった顔をした。皆、彼を知っている。彼の薬や意気込み、えんえんと続く熱い語り口が彼を有名人にしたのだろう。「彼は終わりなく話しまくるから気をつけろよ。」と忠告までされた。
ピーターに会うため電話をかけてまもなく、古いフォルクスワーゲンが私達の泊まっていたバンガローの前に止まった。髪を後ろで束ね、野球帽をかぶった大きな男、スネークマンが車からおりて笑顔でこちらへ歩いてきた。私達はそのまま彼とバンガローの前で2時間くらい立ち話をすることになってしまった。
カナダの国立研究機関で整備士・電気技師として働いていたピーターは20年前カナダを離れ、ベリーズに来た。以前、趣味として化学や薬を勉強していた彼は、一生をナチュナルメディシン(自然薬)の研究に専念しようと、ベリーズへ移るを決心したのだ。
調査・研究を進める中で、彼は初老のモパンマヤの伝統治療師、ドン・エリジオ・パンチと親交を深めるようになった。
”Sustun”の著者、ロジータ・アルビーゴ博士の師として死後(1996年没、享年103歳)有名になったパンチはグアテマラ 生まれで、”Doctor-Preist”(医者そして聖職者)という称号とともに、最後に知られるマヤのシャーマン(まじない師)だった。

カスカベル

ピーターは自然薬やマヤの文化・歴史・伝説の調査中、エルサルバドル出身の治療師と会い”カスカベル”について知るようになった。カスカベルとはスペイン語でガラガラヘビのことだ。言い伝えによると、古代のマヤではよく知られた、最も効果のある薬の1つの原料が”カスカベル”だったという。
今日でも様々な種類のカスカベルが中央アメリカ、特にメキシコで使われているが、重大な病気の治療に効果があるということは、どの種類も証明されていなかった。しかし、これはピーターが北ベリーズで Tzabcan と呼ばれるガラガラヘビを発見するまでの話だ。 Tzabcan からは、より効果のある種類のカスカベルを作ることが出来るのだ。
一般には公表されていないが、マヤの古い文書のいくつかにはカスカベルの準備・作り方にふれたものがあり、それによると興奮していないヘビを用いなければならないと書かれてあるという。おそらく、ヘビの怒りが薬の成分になんらかの変化をもたらす原因となり、おとなしいヘビだけが薬に適していると信じられていたのだろう。特に熱帯性のガラガラヘビは細身で素早く、その攻撃的な行動で知られている。しかし Tzabcan (ユカテクマヤ族でいうガラガラヘビ)は例外だ。ピーターは、肉付きが良くておとなしい Tzabcan が、“伝承のヘビ”だという学説をたてた。
その後、爬虫両生類学博士のウルフガング・ウースター氏がピーターの発見を証明するため、ベリーズに2ヶ月間滞在し、公式に Tzabcanをその地域でしか知られていない新しい亜種として分類している。
ピーターがマヤ伝統の薬”カスカベル”を作り続けて、20年くらいになる。 Tzabcanの皮を剥ぎ、乾燥させ天火で焼く。その後それをすりつぶして粉にし、ふるいにかけるという作業で薬が出来る。村人でヘビに恐怖感を与えず殺せる者がいるらしく、以前は殺したヘビを捨てていたが、今ではその殺したへびをピーターのところへ持ってくるようになった。それから地元の人々が彼に”スネークマン”というぴったりの名を付けたのだ。

カスカベルは免疫系統の増強剤として、それほど重くない病気の治癒を早める手助けをする。カスカベル自体が病気を治すわけではない。しかしピーターは今までに様々な病気(エイズ・ガン・末期の糖尿病・潰瘍・重度のやけど、化膿、壊疽)の患者を治すことに成功してきた。毎日スプーン1杯の服用が免疫を高め、マラリアやデング熱を含むほとんどの病気を防ぐ手助けもするという。ピーターの治療を受けた人々は、地元の人も外国人も同様に、その後もカスカベルの強い支持者となっているという。
一方、科学者や医療関係局は西洋の基準とは一致しない特殊な物から目を背け続けている。医師達や食品医薬品局はカスカベルの化学的構成要素を明らかにするように要求していると、ピーターが言った。
「何を探しているのかもわからず、どうやって活性成分だけを分離させることが出来るんだ?何の薬品が免疫を高めるのか、増加や反応を起こす成分の組み合わせは何なのかなんていう種明かしはこの薬にはないんだ。それに160度の天火でヘビを焼いた後に有機化合物が残るのか?変質の過程を通り抜け、水分もなくなり無機質だけが残るんだ。セメントみたいなもんだ。砂と混ぜて家でも建てられるかもな。無機質がどうして薬になれるのかって?さあ、神のみぞ知るといったところだな。1980年代後半、薬学の研究員がここに来てカスカベルの分析をしていったことがあった。培養をはじめ、すべてのテストをしていたが、始める前からそんなテストはこの薬には適さないと彼らに言ったんだ。カスカベルは免疫系統にのみ働きかけるんだから、致命的な病気の病原菌の培養にこの薬を入れたって、病気を殺すわけじゃないんだ。彼らがそれをわかるまで2年もかかった。俺の言うことを認めるまでその方法で分析を続け、50万ドル以上も費やしたんだ。」
私は粉薬を1口、口に入れてみたが、焼いた魚の骨以外特別な味はしなかった。

 カスカベルの効果

ピーターのホームページがある。(http://www.wireworm.com/snkm/index.htm)
まず見て欲しいのは、薬の素晴らしい効果が分かる写真だ。特に、手に重度のやけどを負った患者の写真には驚くだろう。麻薬常習者だったその男はディーラーから薬を盗み続け、3度目にして見つかり手痛い仕返しを被った。ディラー達は彼の手をつかみ、1分近くもたき火の炎の中に入れ続けた。激しい痛みにもかかわらず、きまりの悪さに彼は病院へ行かず4日間もやけどを放っておいた。そして、彼がピーターの元を訪れた時には、やけどからひどい壊疽(えそ―組織が死んで腐ること)と化膿が起こり、すでに肩の近くまで広がってきていた。もし病院であれば、手の切断と強力な抗生物質の投与が行われていただろう。大量のカスカベルを投薬して数日後、化膿と壊疽は減少し、2週間目には皮膚組織が再生し始めてきた。

回復の経過を追った一連の写真は、再び彼が手の動きを取り戻すまでを見せている。
ピーターによれば、カスカベルはそれほどでもないのに対し、重い病気に使われる化学薬品の副作用・後遺症はあまりにも激しく危険で、そのための治療をしなければならないことが多いという。化学療法、マラリア薬、そして強い抗生物質が外部からの病原体を破壊するという役目を果たすと同時に、その過程で他の有毒な副作用に加え、免疫系統や白血球の数に悪影響をもたらすのだと彼は強い口調で説明した。
カスカベルだと、血沈(赤血球沈降速度)に変化を来たすが、それは避けられないことだと彼は付け加えた。新しい細胞が生成される際、死んでしまった細胞が体内に吸収され、結果としてかなりの量の副産物が出来る。血液に吸収された副産物の死んだ細胞が原因となり、血沈が正常値の40から60倍までにはね上がる。そして、血液の成分を調整する腎臓がかなり濃い尿を出す。そのためピーターは、腎臓の働きを助けるためにシンプルな、それでいて非常に効果のあるマヤ族の薬を処方する。トウモロコシの穂の毛を煎じたもので、お茶のように飲むだけだ。
(訳者注:トウモロコシの穂の毛のお茶には利尿効果があるらしい。)

カスカベルの現実

彼の作るカスカベルがよく効くということはピーター自身、よくわかっている。何年もかけ彼は証拠書類を作成し、新薬の発見を認められるよう試みたが、結局断念した。合成的に作り出したり、分解したりすることが出来ない薬の使用という例外を、西洋医薬が認めることはないとピーターははっきり悟ったからだ。カスカベル発見の喜びや興奮は、年と共に薄らいでいったという。ピーターが試みたのは、まるで”克服できない懐疑の壁に、頭をがんがんぶつけている”ようなものだったという。
カスカベルが正式に合法化、承認されるための数年にも及ぶピーターの必死の努力は、結果的に彼を傷つける結果になった。疑い深い人々を説得し、静めるために休みなく闘い続けることは、自然薬を作る彼にとって最もつらいことであり、失望させられることだった。
多数の支持や新しい医薬の発見という栄誉ある地位を追求していたピーターにとって、これらの夢を捨てざるをえないというのはつらい決断だった。そして同時に、百万ドルの夢も徐々に消えていった。「おれは慈悲深い人間でもなんでもない。」と言うように、彼の当初の目的は”お金”だった。そして彼は正に奇跡の薬(カスカベル)を発見し、その努力が報われると確信していた。が、最近ではホームページにわざわざ証明書を提示することも滅多にしなくなり、上流社会や現代的な社会からの患者に対して嫌気を感じるようになった。十分な報酬の無い、それでいて骨の折れる仕事だからだ。
 「末期の胃がんで死にかけている患者がいるとする。それも自分の病気をはじめ、治療法や健康管理とかなんとか、全てを知り尽くしていると思い込んでいる患者だ。その患者に、どうやってこのカスカベルが効くなんていう説得が出来る?ジャングルから見つけてきたヘビの薬に絶対的な信用をおくものか。たとえ彼が認可されたすべての治療法を試し尽くしたとしても、すでにメディアや医師達に洗脳されているために俺の治療を受けていながら同時に、他の治療法にも賭けてみようとするんだ。ところがその結果、現代の薬が患者自身の免疫系統の働きまで殺していまい、カスカベルの効果が全く失われるんだ。」
明らかに、カスカベルが免疫増強に効果があるのに対し、化学療法や抗生物質等は病原体を攻撃すると同時に体の自然な防御する力さえも壊してしまう。
「いくら説明しても抗生物質や化学薬品も一緒に飲む患者に、真剣に取り合う必要なんかない。薬代を払い続けてくれる現代社会のガン患者を毎年1人は確保するだけさ。その他の患者は地元の人々だ。彼らは俺の言う事に耳を傾けているからだろう、薬の効果にとても喜んでいる。
カスカベルがなぜ効くのかを説明する化学なんて古代マヤには存在しなかった。彼らは、薬になる多くの野生の草や木についての知識を持ち、それらを使って日常の軽い病気や怪我を治療していた。そして重病の時にはシャーマンに助けを求めたんだ。治った人々はその治療法を信じ、誰も何故かは知らなかった。」

近代化されていった息苦しい西洋の国から災害や病気が生まれていく一方、かつて数百万人という健康に恵まれた人々の社会が繁栄していった。彼らが何か”正しいこと”をしていたのはたしかではないだろうか。

カスカベルの将来

今の世の中、薬の世界も宣伝や支配関係、マーケティングそして金で決まるとピーターは信じている。ここベリーズでは全てが遠い存在だ。地元の患者に儲けにならない額で薬を売ったり、物々交換でさえも認めている彼は、最後の”お金”に関して何か釈然としない様子だった。1g作るのに35セントかかる薬を、その殆どがぎりぎりの生活をしている地元の患者には25セントで売っている。友人や他の地元の患者は50セント、海外の患者は1ドルになる。
宣伝やマーケティングのための予算などは存在しない。しかし、カスカベルを売り出すための数百万ドルに及ぶ投資資金を、ピーターは未だ夢見ている。薬のテストや大々的な宣伝、食品医薬品局の認可手続きの通過、そして小島をヘビの繁殖場にするための資金だ。「一年以内にこれが軌道に乗るさ。」と、彼は言った。
ピーターは雑草が目立つ庭を歩きまわり、バナナやキャッサバを取りながら私達と話していた。彼の妻や家族は台所で料理をしている。それから私達は彼の書斎兼ガレージに場所をかえた。埃をかぶったようなコンピューターを彼がいじくっている間、私達はそこら辺に置いてある面白そうな道具やピーターが修理したり拾ってきた電気製品を手にとって眺めていた。
彼は私達の持ってきたフロッピーディスクからファイルをコピーしようとしたが、コンピューターのハードドライブが壊れ、フロッピードライブも作動しなかった。ピーターは少しもうろたえず、自家製サトウキビのワインボトルを取り出し私達に注いでくれた。「このワインは血のめぐりを良くしてくれるんだ。飲めば頭にガーンときてクラクラするかもしれないが、体にいい。俺が手に入れるヘビはサトウキビ畑にいるのが殆どで、ヘビを売りに来る奴らからこのワインを時々もらうんだ。」
彼は壊れたコンピューターをバラバラに分解し、そして呆気に取られている私達の目の前でさっさと修理してしまった。

ピーターが言うように、近い将来彼の夢が実現するのかもしれない。彼の名が一躍脚光をあび、薬局のチェーン店に彼の名前が入った薬が並ぶ。インターネットで評判の悪かった彼の挑発的で大袈裟な言動も、自分を売り出すために少し控えるかもしれない。いずれにせよ、それが上手くいけば彼の生活はかなり楽になるはずだ。
しかし、野生のヘビと繁殖されたヘビとでは何かが違う。カスカベルの神秘的な部分が薄れてしまうのは、何か寂しい。

中米シーカヤック遠征旅行カスク2000日本語版ホームページ

訳:西山 晴美     更新日:2000年 7月 12日
オリジナルテキスト
Snakeman and the Ancient Mayan Medicine (May 1999)

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