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CASKE2000

 

Missing out on
Sea Turtle Feast

食べそこなったご馳走、ウミガメ料理(ニカラグア)

文:ジョンフィリップ・スレ


午前一時、僕達の長い一日がまた始まった。僕は腹の調子が悪かったが、なんとかプリンザポカからサンディベイ・シルピ村までの約50kmをパドルした。そこからパドルすること6時間、英語を話すクレオールの村タスバポニーに着いた。距離にすればたったの33km、しかし強烈な腹痛に苦しまされる最悪のパドルとなった。ものすごい下痢と、じわじわとした痛みから耐え切れない程の痛みまで、何段階にも分かれる腹痛が僕を襲った。もちろん何も口にすることは出来ず、自動パイロットモードに切り替え、空腹のまま力なくパドルを動かしていた。そして襲う痛みをぐっとこらえながら、また用足しに海の中にジャンプしなければならないのだろうか・・・などと考えた。もし自分だったら絶対にパドルしなかったとルークも断言するほどだから、端から見てもかなりひどかったに違いない。

実際、僕の気分も体調も見た目より遥かに悲惨だった。僕は仕方なく薬箱からフラジル(抗生物質薬)を取り出した。フラジルと共に、白ご飯、パン、コーラ(消毒薬の入った水は腹に悪い)という質素な食事は欠かせない。しかし、これがまた最悪のタイミングだった。僕達が立ち寄ったここタスバポニーは、ウミガメ料理で有名な村なのだ。ただの白ご飯を食べる僕の目の前で、ルークはいかにも美味しそうにウミガメのレバーやヒレを食べ、おまけにユカ芋のケーキまでデザートに頼んでいた。

タスバポニーは、僕達の知るニカラグアの村の中で一番好感がもてる、気に入った場所の一つだ。たしかに先進国の基準からすればかなり貧乏ではあるが、北部に住む先住民ミスキトスと比べれば、タスバポニーの村にはまだ余裕がある。農場には様々な果物や野菜が植えられ、牛や豚、やぎ、ニワトリ、馬などの家畜もいる。しかしながら、彼等の主収入、主食は海からの恵みによる。村の端にあるラグーンでは、エビ漁がさかんに行われ、ちょっと沖に出れば島々の近くで魚や貝、ロブスターが獲れるため、村の各家族が所有の網を仕掛けている。家族の中にはダイバーとして働いたり、商業用ボートで働いたりしている者もいる。
そして毎年この時期になると、海からの贈り物”ウミガメ”がやってくる。

西側諸国の中には、カメを食べるという考え自体に不快感を示したり、賛成できないという人々がいるかもしれない。しかし、グルメ達にとってカメは高級食材の一つとなり、フランス人や日本人の間では言うまでもなく珍味の一つとされている。カメは捨てるところが殆どなく、レバーは申し分なく美味いし、脂肪でさえも食べられる。僕は他の動物の脂肪は控えているが、カメのは特別で、味も舌触りも楽しんで食べられる。僕達はタスバポニーの村や人々をもう少しよく知るため、ここに一日滞在することにした。おかげで、ウミガメをさばくところから料理するところまでをじっくり観察することが出来た。この村は、自分達が消費する必要数だけを獲り、むやみにカメを獲ったりはしない。彼等はまず、捕まえたカメの頭を丸太で叩き、即死させる。この方法なら一瞬でカメは死ぬ。欧州で見たことがある豚や牛のと殺法よりも、ずっとマシではないかと思った。この後、熟練の肉屋が素早くカメの解体作業を開始する。まず前ヒレを切り、鋭いナイフを甲羅の下に刺し込んで周りを切っていく。そして切り終わると、まるで缶詰のふたのようにパカッとカメの体から甲羅を外す。いや、それが正に缶詰の様相だ。体重約90 棟kgのカメから55kg以上の肉が取れる。上等の牛肉よりも遥かに美味い赤肉がその殆どを占め、捨てるのは脾臓と腹部の表面だけだ。作業している周りでは、おこぼれにありつこうと犬やハゲワシがせわしなく待ち受けている。およそ30分ほどで全ての内臓をきれいにし、それらを大皿のようなひっくり返したカメの甲羅にのせれば、内臓と肉の盛り合わせができる。女性達は血までも全てすくいだす。この血を火にかけ、さらに濃くすることで、ご飯に良く合うソースができあがる。言うまでもなく、彼等は何も無駄にはしていない。肉屋の主人の作業が終わる頃になると、村人達は自分の好きな部分を手に入れようと計りの後ろに並び始める。隣の人々は胃や腸、ルークは脂肪、僕はレバーと、好きな部分は様々だ。僕は食べたことはないが、腎臓や肺も美味いと聞いた。肉屋の女将は、すぐになくなってしまうのを見越して家族の分もとり損ねないよう手際良く作業を進める。

豊かな国に住む裕福な動物の権利保護運動家達にとって、外国で行われるカメ漁の禁止を押し付けるのは簡単なことだろう。しかし、モスキートーコーストに住む人々のように、貧しさで他の肉を買うことができない場合もあるのだ。ウミガメの保護は、”恥ずかしむべき行為、カメ漁”の禁止以前に、人々への”教育”が必要になる。それは、お金持ちの保護運動家に、貧しい村人達がいかにウミガメを必要とし、貴重に消費しているかについて知ってもらうことだ。実際にウミガメの解体を見て肉を味わうことで、彼等は動物の権利を唱える代わりに、村人達が代替となる食料を得られるまでは、カメが季節的に主食となることを理解するはずだろう。「これが俺等の牛肉さ。」と村人達に言われれば、何も言い返すことは出来ないはずだ。森林破壊の原因に家畜の放牧地や農地の拡大があるが、特に米国の責任は重い。南アメリカでは、肉牛の放牧地を拡大するために森を開拓したため、急速に森林破壊が進んでしまった。その牛の殆どは、米国における肉消費の需要を満たすためのものだ。又、主な取引先は日本か米国という大規模に行われる商業漁業の利益の行き先は、結果的に発展途上国に顕著な腐敗した政治家達のポケットであり、働いた漁師達の懐ではないだろう。
ウミガメが絶滅の危機に瀕していると僕自信認めたとしても、裕福な国が肉の過剰消費を止めたりサゴのような作物(美味しいとは言えないが、使用耕地面積の割合に対する収獲率が高い)を植えたりしない限り、貧しい隣国に対して何かものを言える立場にはなり得ないと僕は考える。ベジタリアンだって新聞を読んだり木材やガソリンを使っていれば、ここに住むカメ漁の漁師達よりはるかに環境破壊の原因を作っているはずだ。とにかく、カメ漁の禁止によって何かが解決するとは思えないし、地元住民が何らかの代替資源を得られるまでは、ウミガメの全面保護を強要することはできないだろう。

解決策の一つとしてコスタリカで行われているエコツーリズムがある。これは、ウミガメの肉よりもはるかに高い利益を生んでいるという。国立自然公園の中でも、トルチュゲイロナショナルパークになると、カメの産卵や卵のふ化と赤ちゃんウミガメを見るため、世界中から人々が訪れている。全ての村人が観光業で生計を立て、以前ウミガメを獲っていた時よりも生活が楽になったという。しかしながら、入ってくる外貨により恩恵を受けるのはコスタリカだけであって、当然のことながら隣国には何も入らない。そしてそこでは、依然としてカメの肉が必要となる。僕がその現状を理解できたように、他の人々にも理解してもらいたいと思っている。これらの貧しい村を訪れ、親切なクレオールや先住民のミスキトス、ガリフナの人々と一緒にウミガメ料理を食べてみて欲しい。きっと、スーパーで買う大量生産されたホルモン漬けで味のない鶏肉や牛肉を、懐かしむことはないだろう。

ああ、僕の目の前ではルークがいかにも惜しそうにまだ骨にしゃぶりついている。一方、僕の腹は未だに白ご飯しか受け付けてくれない・・・。

ニカラグア遠征からのスライド写真
ウミガメ解体作業の風景を見ることができます。お見逃しなく!

英語オリジナルテキスト: ジョンフィリップのニカラグア遠征日誌より
5/14/2000 - Tasbapounie - "Missing out on the Sea Turtle Feast"

訳:西山 晴美      更新日:2000年11月 3日

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