CASKE2000


Hunting and Poison

狩りと毒矢

文:ジョンフィリップスレ1997


深くうっそうとした熱帯林での狩りは、まさに技術を要す。おい茂る木々が動物達にとって、格好の隠れ場となるからだ。高さ30mの木々の枝が遥か頭上を覆い、そこに猿や鳥が隠れる。鹿やブタはハンターのかすかなにおい、または音で逃げ去ってしまう。
インドネシア・スマトラ島に住むメンタワイの人々はこの環境で、しかも弓と毒矢だけを使い一人前のハンターにならなければならない。その訓練は小さい時から始まっている。子供達は歩けるようになると、彼らにとって初めての矢を作りはじめる。4歳から小さな弓でココナッツを的にして練習し始め、7歳くらいになると先の尖っていない矢で鳥を獲るようになる。そして10歳で大人と一緒に本当の狩りに出かけながら、技術に磨きをかけていく。動物の足跡を見つけたり 臭いを嗅ぎ分けられるのも、狙いを外さないのと同じくらい大切だ。そしてジャングルの中を音を立てずに歩くことは、僕達にはまず真似できそうにもない”技”だろう。

狩りの技術のほかに必要なのは、矢尻に塗る毒だ。メンタワイの人々は、独自の黒魔術と毒に対し、畏敬の念を抱きながら森の中で生活している。僕は彼らと生活する中で、一度も黒魔術の存在を見聞きしなかった。しかし、彼らが狩りに使う毒の効果については証言できる。鹿や野生のブタをほとんど一瞬にして殺せるその毒は、効果抜群と言っていい。
何についても言えることだが、一体どうやって彼らがこの自然の秘密―毒―を発見出来たのだろう。メンタワイの毒を作るのには、3つの材料が必要になる。 Raggiの葉、Uratの枝 そしてgreen chiliesだ。この うち1つが欠けただけでも、毒の効果は失われる。
その効果を知った僕が心配していたのは、この毒で死んだ動物の肉を食べても大丈夫なのかということだった。しかし、どうやら口から摂取する分には心配のない、それでいて非常にパワフルな毒のようだった。僕はメンタワイの友人にいわれるまま、実験のため毒を塗った矢尻に舌をつけた。(もちろん、ためらいがなかったわけではない。)少し苦くて、かすかにヒリヒリするような感覚が舌に残っただけで、後は何も起こらなかった。体の循環系に入ってはじめて毒の効果が現れるのだと友人が説明してくれた。毒作りの過程において、傷口にちょっとでもこの毒が入れば死につながる。

さて、メンタワイの生活では、しきたりや信仰がほぼすべての事柄と結びついている。毒作りと狩りも例外ではない。狩りで毒が効果を現すために、彼らが守らなければならないことがいくつかある。

・毒作りのプロセスを見た者は、狩りの前に体を洗ってはいけない。
・水やココナッツジュースを飲んでもいけない。(沸かした物は良い)
・狩りの前夜にガールハントをしたり、SEXをしてはいけない。

もしこの決まりの1つでも破れば、毒の効き目は無くなると信じられている。狩りと毒、両方がメンタワイの人々にとって聖なる儀式なのだろう。

ジョンフィリップ・スレ

訳:西山 晴美    更新日 : 1999年 11月 1日