CASKE2000
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MEDICINE メディシン
長老のsikeirei(メンタワイのシャーマン)はメンタワイの森にあるすべての植物を知っている。彼は毎日違う植物を混ぜ合わせ、悪いスピリットを追い払うための香水から、日常起こる様々な疾患の治療に使う薬までを作っている。メンタワイの人々と生活する中で、何度となく僕は彼らの伝統的なメディシンのお世話になった。そして、その効果と彼らの知識には驚かされっぱなしだった。 ●Finger Cut 足にくっついていたヒルを取り払った後のことだ。流れる血に群がる虫をはらおうと、手を振り下ろした瞬間、友人のヘロニムスのナタにおもいっきり手がぶつかった。小指の付け根を切り、どっと血が流れ出てきた。ヘロニムスは素早くbulut sedet (メンタワイ語)ブルートセデット(leaves of SEDET)を摘み、ペースト状にするため葉を口に入れて噛み始めた。ざっくり切れた小指の傷を塞ぐためだ。彼はペースト状になったセデットを傷口につけた後、セデットの葉でつつみ、ラタンの細い紐を上から巻き付けた。 その夜、片手で体を洗った後、僕は包帯代わりの葉を取ってみた。葉っぱのペーストが傷口の消毒にどれだけ役立つものかと疑いながら、紐を解き始めた。汚くなって化膿した傷口と対面するのかと思うといい気持ちはしなかった。が、開けてみて驚いた。傷口はきれいそのもの、血も出てなければ化膿もしていない。傷の深さだけははっきり見え、骨の近くにまで達していた。 ●Hand Cut 数週間ほど熱帯林で生活しても、僕のジャングルスキルは7歳の子供にも及ばない。ある日、高床式の家に戻るため濡れた丸太をのぼっている最中、僕はすべって落ちてしまった。落ちただけなら良かったが、自分の持っていたナタの刃に手をつき、ざっくり切ってしまった。どう見ても十数針は縫わなければならないような傷だ。このジャングルの中から、近くの医療機関へ行くのには数日かかる。そんなことを考えている間にも血が止まることなく木の床に滴り落ちる。友達のsikeirei(メンタワイのシャーマン)、マチヌスが急いで外に走り出た。それから1分程経って、マチヌスは何かの葉っぱを手にして戻ってきた。彼は葉の茎を折ると、出てきた葉の液を直接傷口につけた。燃えるような痛みの後、信じられないことに傷口がのりをつけたようにぴたっとふさがった。燃えるような感覚も消え、手を動かしても何の痛みもない。 残念ながらインドネシア語−メンタワイ語の辞書はない。これがあればどんなに役立っていたことかと、いつも思っていた。先住民の持つ知恵と秘密を僕達の生活の中でいかせるのにと。 ジョンフィリップ・スレ 訳:西山 晴美 更新日 : 2000年 2月 27日 |