そのココナッツジュースは渇きを癒すだけでなく、カリウムや他のミネラル分を豊富に含んでいる。熟していないココナッツの中にはたくさんのジュースと、ヨーグルトゼリーみたいな半透明で柔らかくて美味しい胚乳がある。熟したものはその胚乳が固くなっている。そのままでも食べられるが、いろいろな料理に加えても最高だ。栄養面に加えて、ココナッツは薬のような働きもあるという。熟していない実のジュースは、心臓や肝臓、腎臓疾患、淋病にもよいといわれている。また、脱水症状を避けるには、ココナッツジュースにライムを加えたり、ライムと粉ミルクを混ぜるのも効果的だという。
さて、問題はどうやってそれらの熟していない実を手に入れるかだ。ビーチに落ちている実はすでに熟し、中の胚乳は固くなっていて、肝心のジュースはほとんどない。そうなれば、木に登って取る以外ないだろう。(代わりに登ってくれる人を見つけるのも一つの手だ。地元の人々は子供の頃からやしの木に登っているから、見つけられるはずだ。)
自給自足を目指す僕達は、やしの木登りのテクニックをマスターするために必死になって登り続けた。初めの何度かは、1〜2m登るのがやっとだった。木の高さにおじ気けづいていたし、僕達の手のひらと足の裏の皮膚は軟弱すぎた。そして、初めてやしの木から下りた時には、見事に胸と腕の内側を擦りむいてしまった。木をしっかり抱きしめながらズルズル下りれば、こうなるのも無理はない。
しかし本当に”登りたい、登れらなければ”と思っているなら、こんな事であきらめてはいけない。椰子の木登りには基本的なテクニック、それも簡単に出来るのが2つある。軟弱な皮膚なんて気にせず、練習すれば良いだけだ。初めのうちは擦り傷が絶えず痛い思いもするが、ジュースいっぱいの美味しい実を十数個もとれれば「努力の甲斐があった・・・」と、満足できるはずだ。そして1週間後には何の苦もなく木に登り、椰子の実取りが簡単で最高におもしろいサバイバルスキルの一つ、または特技の一つになるかもしれない!
やしの木に登る際、もちろん素手、裸足の方がいい。擦り傷防止のため長袖Tシャツの着用もお勧めする。
まず初めに、フロントフット テクニックと名づけた方法。椰子の木をしっかり抱えるように、幹の後ろ側で両手をなるべく近い位置に置く。足を持ち上げて、足の裏を自分の正面の幹に押し付ける。常に足の裏の親指の下あたりを幹に押し付けながら、幹を抱えている手と足とを交互に動かし、歩くように登っていく。テクニックとしては一番簡単そうに見えるが、バランス感覚と腕の力が必要。
次のフロッグテクニックの方が、真っ直ぐに伸びた椰子の木を登る場合、より効果的だと思う。(だだし、幹が太すぎなければの話。)両足の裏で幹の両サイドを押えるようするため、足を広げて膝をしっかり曲げる。その恰好はカエルの足に良く似ていたので(僕が)フロッグテクニックと名づけた。
手の位置はフロントフットと違い、片方の手を幹の後側の上方に置き、もう片方を、前側の幹に胸の高さに置く。こんな風に両手で幹の前後に力をかけて自分の体を支え、両足(膝)の屈伸繰り返しながら上に登っていく。両足を同時に素早く引き上げ、カエルの恰好に戻って足の裏で椰子の木をしっかり押える。この恰好だと自分の体重を支えることが出来、上に進む前に数秒間休むことが出来る。
上の2つの方法がどうも上手くいかない場合、スリランカで使われている方法を試してみてはどうだろう。フロッグテクニックのバリエーションで、違う点は輪状のロープや布に両足(足の甲あたり)を入れることだ。幹の両側を足で押え、足にかけたロープや布が幹の前側を押える恰好になる。ロープや布のおかげで幹に接触する面積が大きくなり、圧力が加えられる部分が広がるため上に行きやすくなる。
やしの木の上まで登ることが出来たら、片手でココナッツを掴んでひねるか、椰子の木のてっぺんまで出る。ガリフナの友人が”一番良い方法は、やしの葉をくぐりぬけ、てっぺんまで登ってやしの葉の上に立つことだ”と、教えてくれた。これだと、木をずっと抱えながら実を取らなくても済むので非常に楽だ。てっぺんに出るコツは何層か上の葉を掴み、体を引き上げること。一番下に生えている葉は絶対に掴まない。枯れていて、折れやすいからだ。
実を取るのに、ナタは特別必要ではない。実を掴んで、落ちるまでひねっていれば良い。もし木のてっぺんまで行けたら、片足で実を上から押して落とすことも出来る。しかし、椰子の葉が密集して生えていると、葉をくぐり抜けて上に出るのは不可能。そうなると、フロッグテクニックのように幹の両側を足で押え、片手でしっかり木を抱えながら、もう片方の手で下から実を掴んで落ちるまでひねることになる。こちらの方が力は要るが、それ程難しくはない。
充分な実を落とすことができたら、今度は下りなければならない。簡単ではあるが、初心者にとっては苦痛の時になる。方法はフロッグテクニックとよく似ていて、足の恰好は同じのカエル足。登ってきたのと反対に、跳ねながら一歩づつ下がっていく。しかしほとんどの人は、両手を幹の後ろ側で交互に下へ動かし、足の裏でやしの木を挟んだまま滑りおりてくる。もちろん素足だ。しかし、地元の人達にはまったく問題ないことでも、僕達がすると足の裏や手のひらを切ってしまうのだ。皮膚が軟弱過ぎると、書いた訳が分かってもらえただろうか。腕や、時々胸までも、木でこすれて擦りむいてしまう。
大変そうに見えるかもしれないが、美味しい実のためなら少々の擦り傷と努力は無駄にならない。熱帯地方に長期滞在するなら、マスターしておくべきテクニックの1つだと思うのだが?しかし無理は禁物、出来ない時は潔くあきらめよう。椰子の木に登らなくても、ぜひジュースや胚乳を食べてみて欲しい。きっと好きになるはずだ。
また、椰子の葉で日よけや雨をしのぐためのシェルターを作ることが出来る。シュロ等、違う種類の椰子ならその葉を葺いて屋根ができるし、無くても組み立てた枠組みにココ椰子の葉を縦横におけば簡単かつ太陽の光や雨をしのぐのに充分な小屋が出来上がる。
椰子の木登りは、熱帯地方においてとても大切なサバイバルスキルの一つだと思う。しかし他にもたくさんの方法で食べ物や水を確保したり、シェルターを作ることができる。南の島にはたいてい熱帯林も広がっている。海辺とはまったく違う環境だが、役に立つ植物や野生生物が同じように豊富に存在している。
僕達は、このシーカヤック遠征旅行で学んだサバイバルスキルや、訪れた先住民の人々のライフスタイルをこれからも記録していきたいと思っている。