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Jean-Philippe's journal いつもは朝5時半から6時半くらいの間に起き、5分後には活動を開始できるくらい目覚めがいい。しかし、なぜか今朝はなかなか起きられなかった。 僕達はかなり遅く、11時半頃出発した。今日の目的地は21km程離れたラスアニマス岬だ。僕達は波のない穏やかな海を3ノット(1ノット=時速約1.8km)で進んでいた。海があまりにも穏やかだと、全く進んでいないんじゃないかと思うくらい距離が長く感じる。2時間ほどたった後、まだ半分しか来ていないことを知ってルークはショックを受けていた。 穏やかな日はたいていお互い離れてパドルしている。僕がリードを取り、ルークは姿が見える範囲で後に続く。時々止まって彼を確認したり合図を送ったりする。たまに並んで進むこともあるが、たいてい話しが出来ないくらいの距離を保ってパドルしている。 ラスアニマス岬を通り過ぎていた。何頭かの鯨が横切っていき、僕のすぐ近くまで潮が飛んできた。遠くにはシャチの群れがジャンプしながら泳いでいる。遠すぎて写真が撮れなかったのが本当に残念だ。 英語テキスト:Thieves and glassy flat wat Wonder and Power, a Day in a Marine World 1998年10月29日海の世界の、ある1日(前半) 朝8時、僕達はサンラファエル湾のビーチを後にした。今日は、小さな漁村でサメを研究している海洋生物学者のウェイドに会うため、この湾の向こう側にある岬まで約30kmをパドルする。 海は静かで風もそれほどなかった。こういう穏やかな日はパドルも単調になり、取り止めのない考えが、ボーッとした頭に浮かんでは消え繰り返す。突然、潮を吹き上げる音で我に返った。白昼夢から現実に戻り見上げると、先の方に潮を高く吹き上げながら数頭の鯨が泳いでいる。潮を吹いたかと思うと水の中に潜り、違う鯨がそれに続く。僕は仲間に入ろうと急いでパドルしたが、鯨達は待っていてはくれなかった。 数分後、たくさんの小さい潮が吹き上げられているのが見えてきた。次第にそのたくさんの潮は何百という小さい噴水に変わり、しぶきが水面に飛び散った。初めは鯨かと思っていたが、気がつくとそこら中イルカだらけになっている。僕の前を横切っていくイルカの群れは、なんと幅が約10m(10〜15匹)、約2kmにわたる行列になって泳いでいた。イルカ達は僕の側まで来ると挨拶のためか、それとも僕が邪魔なのか、ピシャっと尾ヒレで水面を叩いていった。群れを横切るために少しずつ近づいたが、カヤックが進む度にイルカ達は群れの形を変え、弓状になってカヤックを避けるように泳いでいく。行き場のなくなった僕は、イルカの群れをしばらく眺めていた。 想い描いていた海の世界と実際が、まさか同じように美しいとは思ってもいなかった。 1998年10月29日海の世界の、ある1日(後半) まもなくして前方にさざ波が見えてきた。もうすぐ強い風と闘わなければならないサインだ。1分もしないうちに、風が顔面を直撃した。全身に力を入れ、パドルをしっかり握り直し荒くなった波の中を進んでいく。ルークを確認するため素早く振り返ったが、彼は見えない。波の後ろに消えてしまったようだ。僕はルートを変更して、近くのビーチで彼を待つことにした。20分間荒波と闘って、ようやくそのビーチの前に来た。 15分ほど休憩して僕達は出発した。岩に囲まれているせいか横風もなく、風に押されるまま岬へ向かう。しかし、また強い向かい風が吹いてきた。それも前よりももっと強い。波がうねり、どんどん高くなってきた。全力でパドルを動かしているのにほとんど前に進まない。小さな漁村はないかと見回したが何も見えなかった。パドルを動かし続けると、小さい湾が現れた。顔面に波がまともに当たり、サングラスをかけていても海水が目にしみてほとんど何も見えない。僕達はもうへとへと疲れ切っていた。 小さい湾の中心に入った時には、ぱったりと風が止んでいた。湾に守られた海に、美しいボートがとまっている。よれよれの僕達は、ゆっくりとビーチに向かってパドルした。やっとビーチに到着したが、僕はウェイドと会うのを楽しみにしていたから少しがっかりしていた。 英語版テキスト:Wonder and Power, a Day in a Marine World Pelican Diving
干潮のおかげでビーチに小さな砂の堤防ができ、戻れなかった海水がせき止められている。近くではハゲワシが、僕の捨てた魚の骨をあさっている。ハゲワシはたいていバハの砂漠の丘陵を飛んでいるが、僕達は高いサボテンの上に止まっているハゲワシをよく見かける。背景のアースカラーとはまったく対照的なハゲワシの赤い頭と黒い羽が、とても印象的だ。 静かな海岸に戻るかと思った時、僕から20mも離れていない所で30〜40羽のペリカンの群れが爆弾のように空から海に飛び込んでいった。すごいスピードでくちばしからダイビングするため、そこら中に水しぶきが飛び散った。まるで、大きい石が水の中にどんどん落ちていくような大きな音だ。しかしペリカンの体は浮きやすいため絶対に沈まない。ペリカン達は頭だけを水の中に突っ込んで、餌取りに必死だ。頭を水面から戻すと、ほとんどのペリカンがくちばしで魚をつかんでいる。それから首をぐっと伸ばして魚を呑み込むと、魚がペリカンの喉を通っていくのがはっきり見える。呑み込んだ後で嬉しさを表すかのようにペリカンのしっぽがすごい勢いでぶるぶる左右に動くのが最高におもしろい。ダイビングから魚を食べるまで、おそらく1分もかかっていないだろう。更に数十羽のペリカンがこれに加わり、同じように海に飛び込んでいった。 いつのまにか太陽が山の後ろに隠れ、空の色が濃いピンクに変わっていた。見渡すと、ターコイズブルーの海がオレンジ色へと姿を変えていく。頭上に広がるピンクの雲のグラデーションが、眩しいくらいに輝く湾の海に反射していた。 英語テキスト:When the hunter becomes hunted (前半) 朝、風がまったく吹いていなかった。ゆっくりと朝食をとり、僕達は今日一日カヤックを休むことにした。ロレトを出てから初めての風がない日だ。休みといっても、今日の夕暮れまでに僕達のカヤックの点検と整備をしておかなければならない。 僕達はもう少しで最終目的地のラパスに到着する。第一ステージが終わるだけなのだが、何とも言えない気分だ。事実、次のステージからが遠征の本番になる。これから行く熱帯の地域では今まで以上の困難と向き合わなければならない。海では波がもっと高くなり、陸では様々な病気(マラリア・コレラ等)やゲリラを心配し、虫にも悩まされるだろう。しかし、同時に熱帯林とそこに生きる野生生物・文化も変化に富んでいるに違いないと信じている。 うーん。どうやら「虫」という字を書いたのがいけなかったようだ。この日誌を書いていると、ほとんど見えないくらいの小さいぶよが僕を襲ってきた。15分後、体中かまれてもう我慢ができなくなった。海に避難しようとノートを置き、急いでカヤックに積んである荷をおろした。重過ぎて1人では海岸まで引っ張れないからだ。ルークはハイキングに、ポール(アラスカ出身のカヤッカー。1人旅の途中私達と会い、一緒にパルチダ島に行くことになった。)は釣りに行っている。僕は本を掴むとすぐ、カヤックに乗り込み岸から離れた。結局、午後はずっとカヤックの上で本を読んでいた。まもなくして、ハイキングの後ポールと一緒に釣りをしていたルークがおいしそうなカツオ釣って戻ってきた。 明日、僕達は夜明け前に出発しなければならないのだが、その理由の一つは風だ。たいてい午後に強い風が吹くから、それを避けるためにも早く出たかった。しかし夜8時にはもう強風がふいていた。僕たちはは3時に目覚ましをセットし、それぞれの寝袋にもぐりこんだ。 英語テキスト:Isla San Francisco 1998年12月10日 64日目 横断 朝3時。アラームが鳴った。誰も動かなかった。2分後、またアラームが鳴った。しかし誰も動かない。強い風が吹き、まだ暗い空には星や半月を隠すかのように雲がかかっている。まだ寒かったが、3回目のアラームが鳴ると僕達は仕方なく暖かい寝袋からもぞもぞと這い出した。急いで朝食を食べてカヤックに荷を積み、4時には海の上にいた。準備も整い、後はパドルするだけだった。 1時間たった頃、風が一層強く吹き波も同じように高さが増した。そして星は夜明けとともに消えていった。朝日が昇り、視界が利くようになったがまだ陸は見えなかった。南にはパルチダ島が、北にはサンフランシスコ島、西にはバハがあるはずなのに一つとして見えず、僕達は3人ぽつんと大海に残されてしまったようだった。それでも高い波が絶えず僕達を強く押し続けていた。再度GPSを取り出し確認すると、今度は135度の方角に進まなければならなかった。どうやら流されていたか、コースを少し外れてパドルしていたらしい。しかしこの状況を考えれば、これだけのずれしか生じていないことの方が驚きだ。時間が経つにつれ波がだんだん見えてきた。高さ約2.5m時には3mにもなる高波が激しくうねり、白い波へと変わっている。そんな中を少しの間サーフカヤック(カヤックで波に乗る)で進んでいると、島が見えてきた。 突然、後ろからルークの声が聞こえた。「マン、オーバーボード!マン、オーバーボード!」振り向くとポールのカヤックがひっくり返っていた。ポールはエスキモーロールで海面に戻ろうとしていたが、僕達が彼の所に着いた時にはすでにカヤックから脱出し、カヤックの上に腹ばいになって僕達を待っていた。ルークが海水でいっぱいになったポールのカヤックをひっくり返らない様に支えている間、ポールが乗り込みスプレースカートをつけた。そして僕がスプレースカートの上からポンプでカヤックの中の海水を汲み出した。 今日はサーフカヤッキングには絶好の波だった。一度だが大きい波に乗り、僕のカヤックはスターン(艇尾)以外宙に浮いてまるでロケットのように前からきた小さな波を飛び越した。楽しくてやめられない。夜明け後ルークも波に乗り始め、楽しんでいるようだった。 午前10時半に僕達はパルチダ島に到着した。ぐったり疲れていたが横断の成功が嬉しかった。島を取り巻く美しい海岸で、僕達は残りの半日を楽しんだ。 英語テキスト:The Rough Crossing ラパスまで、最後の20kmをパドルするだけとなった。海は波もなく平坦で、工場のような建物以外特別目に入る物はなかった。天気もどんよりしていて、今までで一番退屈なパドルだ。僕達は無事ラパスのマリーナに到着し、何日間か倉庫に入れておくためカヤックを海から引き上げた。 バハの手付かずの大自然・人々、全てを楽しみながら1030kmを9週間かけてパドルし、第1ステージの最終目的地ラパスに到着した。コルテツ海は全てにおいて僕達の期待に応えてくれた。 文明社会に戻り、僕達はホームページを更新したり第2ステージの準備を始めたりしている。3月にはガリフナ族と会うためにベリーズへ行き、彼らと一緒に魚を釣ったり世界で2番目に大きい珊瑚礁でフリーダイビングをするつもりだ。続いてホンジュラス・モスキチアの深いジャングルへ入り、先住民の人々の生活を記録する予定でいる。カリブ海沿岸、モスキートコーストをカヤックで行くのは最大のチャレンジになると思うが、バハでの経験が生かされるだろう。砂漠が続くコルテツ海の海岸線から草木が青々と生い茂る水辺へと場を変え、僕達の遠征が再開する。 ジョンフィリップ・スレ プロフィール 英語テキスト:La Paz 更新日1999年7月27日 |
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